うちには、リキという8歳のオスの柴犬がいます。
リキは最初に左目に原発性緑内障を発症し、6歳で左目、8歳で右目のシリコンインプラント手術を受けました。現在は全盲です。
いま一緒に暮らしていて強く感じているのは、全盲になったからといって、リキの生活の質が大きく失われたとは感じていないということです。
これは獣医学的な一般論ではなく、リキと暮らしてきた私たち家族の実体験です。
最初に発症したのは左目でした
左目に最初の異変が出た日の朝、リキは目をつぶったまま伏せていて、あまり動きませんでした。
いつもの様子とは明らかに違いました。
その日のうちに、かかりつけの動物病院を受診しました。ただ、その時点では緑内障の診断は確定せず、様子を見ることになりました。
今振り返ると、飼い主としては、あの段階でもっと早く次の診察につなげられていたらと思う部分があります。
翌週、同じかかりつけ医を再び受診しました。そこで緑内障の可能性を指摘されましたが、リキが嫌がったため眼圧を測ることができませんでした。
その後、他県の眼科専門医を受診し、原発性緑内障と診断されました。そのときの眼圧は、記憶では40近かったと思います。
犬の緑内障では眼圧の上昇が痛みや視力障害につながることがあり、眼圧測定は診断や管理で重要とされています。
発症当日から診断までの経過は、別の記事に詳しくまとめています。
発症から約2か月で、左目を手術
左目のシリコンインプラント手術を受けたのは、2024年5月でした。
最初の発症から約2か月です。
そのころには左目の眼圧は60近くまで上がり、左目は失明していると診断されました。2024年のこの時点では、右目は失明していませんでした。
ベトラタンを1日2〜3回点眼しましたが、リキの場合は十分な効果が出ませんでした。
治療の選択肢として、アーメッドバルブによる治療についても説明を受けました。ただ、効果が長く続かない可能性もあるという説明を受け、私たちはシリコンインプラント手術を選びました。
ここで書いているのは、特定の治療を一般的に勧めるためではありません。リキの場合に、どのような説明を受け、家族としてどう選んだかという記録です。
2025年9月、右目にも最初の異変
右目に最初の異変が出たのは、2025年9月でした。
左目のときとは気づき方が違いました。
ある日の午前中、リキの歩き方が、まったく目が見えていないような動きになりました。鼻を頼りに歩いているように見えました。
このころは、すでにベトラタンを朝1回点眼していました。その日の症状は午前中だけで、しばらくすると再び見えているような動きに戻りました。
飼い主としては、朝に点眼していたベトラタンが効いたのではないかと考えています。ただし、これは日常の様子からそう感じたということで、薬の効果を医学的に確認したものではありません。
その後は状態に合わせて、ベトラタンの点眼回数が1日2回、3回、4回と徐々に増えていきました。
最初のころは「見えていないように見える状態」になる間隔も空いていましたが、徐々にその間隔が短くなっていきました。
同時に、ベトラタンを点眼してから効果が続いていると感じられる時間も、少しずつ短くなっていきました。
2026年4月、右目を手術。直前の眼圧は96
右目のシリコンインプラント手術を受けたのは、2026年4月でした。
手術直前には、眼圧は96まで上がっていました。
高い眼圧の状態が続き、リキは痛みのため体を丸めて震えることがありました。痛みが強いときには救急センターを受診し、レペタンを注射してもらったこともあります。
手術直前の検査では、右目はすでに見えていないという診断でした。3色の光を使った検査でも反応がなかったと説明を受けています。
それでも、私たちが見ている限りでは、手術前のリキは物をよけて歩くことがありました。
そして手術後は、術前と比べて歩き方が明らかに変わりました。
そのため飼い主としては、手術直前まで、右目にはわずかに視力が残っていたのではないかと感じています。
これは診断結果を否定する意味ではなく、あくまで日常生活を見ていた飼い主としての実感です。
右目の手術直前は、毎日6回の点眼・投薬
治療の中で、私たちがいちばん大変だったのは点眼です。
リキは点眼をとても嫌がりました。一人では難しく、二人がかりで点眼していた時期もあります。
右目のシリコンインプラント手術直前には、毎日6回の点眼・投薬をしていました。
時間と薬を間違えないように、家ではホワイトボードを使って管理していました。
点眼を嫌がるリキに、2人がかりでどう続けたかは別の記事にまとめています。
点眼を嫌がる犬にどう続けた?柴犬リキで楽になった2人がかりの方法 →
右目の手術を決めたあとも、まだ若干の視力は残っていそうに見えました。
だから、視力を完全に失うことへの迷いがまったくなかったわけではありません。
ただ、痛みに耐えるリキの姿を見ているうちに、痛みを取ってあげることを最優先にしようという気持ちになり、手術に対する迷いは完全になくなりました。
手術後の歩き方を見て、「やはり直前まで少し見えていたのかもしれない」と感じることはあります。
それでも、痛みを取ることを最優先にした判断について、飼い主として後悔はありません。
全盲になっても、人間の介助はほとんど増えていません
右目の手術を終え、リキは全盲になりました。
現在の生活を見ている限り、私たちはQOLがほとんど下がっていないと感じています。
人間の介助も、全盲になる前と比べてほとんど変わっていません。
夜は一人で寝ます。
外の散歩も今までどおり行けます。リードを通した人間の微妙なコントロールだけで歩けています。
ごはんも食べられますし、水も自分で飲めます。
家の中ではドアを通って、部屋から部屋へ自分で移動します。
何かに頭をぶつけることも、ほとんどありません。
ぶつかりそうになっても直前で方向を変えることがあります。匂い、音の反射、体毛やひげにかすかに触れる感覚などを使って、周囲の位置を把握しているのではないか――日々のリキを見ていると、そう感じます。
もちろん、これはリキを観察している飼い主としての推測です。
家で変えたこと
全盲になったからといって、家の中をすべて作り替えたわけではありません。
ただ、リキが自分で位置を把握する助けになればと思い、いくつか工夫しています。
ドアへ続く部分や狭い場所では、足裏の感触が手がかりになるように、タイルカーペットの材質を変えました。
また、蓋の開いた段ボールは置かないようにしています。
段ボールの蓋の角が、ちょうどリキの目の高さに来るからです。
リキは昔から私の後をついて歩くことが多いため、部屋の中を歩くときは、後ろにリキがいないか気にしながら、以前よりゆっくり歩くようになりました。
こうした小さな変更はありますが、生活そのものが大きく変わったという感覚はありません。
全盲になった現在の散歩、食事、睡眠、室内移動と、家で実際に変えたことは別の記事にまとめています。
全盲の犬はどう暮らす?リキの場合、介助はほとんど増えませんでした →
「見えない=何もできない」ではありませんでした
目が見えないことは事実です。
それでもリキを見ていると、視覚以外の情報を使いながら、かなり多くのことを自分でこなしています。
この実感が、DOG EYE LABを作ろうと思った大きな理由のひとつです。
このサイトでは、きれいな成功談だけを書くつもりはありません。
困ったこと、うまくできなかったこと、実際に暮らしてみて必要だったこと、逆に心配していたほど問題にならなかったことも含めて残していきます。
見えなくなっても、一緒の暮らしは続きます。
参考・出典
- Acute Glaucoma in Small Animals — Merck Veterinary Manual(確認日: 2026/10/4)
- Glaucoma — American College of Veterinary Ophthalmologists(確認日: 2026/10/4)
