犬の緑内障は、眼圧の上昇によって網膜や視神経が傷み、痛みや失明につながる病気です。

とくに急性緑内障では、短時間で視力へ大きな影響が出ることがあります。

そのため、「目が赤い」「目を細めている」「白く濁って見える」「急に見えなくなったようだ」といった変化がある場合、様子を見続けず獣医師へ相談することが重要です。

この記事では、American College of Veterinary Ophthalmologists(ACVO)、Cornell University College of Veterinary Medicine、Merck Veterinary Manualの情報をもとに、犬の緑内障の基礎を整理します。

緑内障は「眼圧が高いだけ」の病気ではない

眼の中には、房水という液体があります。

この液体は眼の中で作られ、一定量が排出されることで眼圧が保たれています。

緑内障では、この排出がうまくいかなくなるなどして眼圧が上昇し、網膜や視神経が障害されます。

ACVOは、緑内障を眼圧上昇とそれに伴う視神経の障害を特徴とする病気として説明しています。

重要なのは、眼圧の高さそのものより、その結果として痛みや視力障害が起きることです。

急性緑内障は眼科の緊急疾患

Merck Veterinary Manualは、急性緑内障を眼科の緊急疾患としています。

眼圧が急激に高くなると、視神経や網膜へ障害が起こり、視力を失う可能性があります。

視力を守れるかどうかは、

  • どれくらい早く気づいたか
  • 眼圧がどれくらい高いか
  • 原因が何か
  • すでにどれくらい障害が進んでいるか

などによって変わります。

「翌日まで待ってもよいか」と迷うような急な変化では、まず動物病院へ連絡してください。

犬が急に見えなくなったら|すぐ受診したいサインと主な原因 →

犬の緑内障で見られる主な症状

CornellやMerck Veterinary Manualでは、犬の緑内障で次のような症状が挙げられています。

  • 目を細める
  • 目をこする
  • 涙が増える
  • 白目が強く赤く見える
  • 角膜が白っぽい、青っぽい
  • 瞳孔が大きい、反応が鈍い
  • 目が大きく見える
  • 視力低下
  • 元気がない
  • 食欲が落ちる
  • 痛みがある

すべての犬に同じ症状が出るわけではありません。

また、赤目や流涙は緑内障以外でも起こります。

症状だけで病名を決めず、診察と眼圧測定などで確認します。

原発性緑内障と続発性緑内障

犬の緑内障は、大きく原発性と続発性に分けられます。

原発性緑内障

眼の房水が流れ出る部分の構造的な問題などが関係する緑内障です。

犬種によって発症しやすさに差があり、遺伝的な素因が関係する場合があります。

原発性緑内障では、最初に片目へ症状が出ても、もう一方の目にも将来的に問題が起こることがあります。

そのため、片目だけ治療して終わりではなく、反対側の目も含めた長期的な管理が重要になります。

続発性緑内障

別の眼疾患や異常が原因となって眼圧が上がるものです。

Cornellは、続発性緑内障の原因として、

  • ぶどう膜炎
  • 眼内腫瘍
  • 白内障に関連する問題
  • 水晶体脱臼
  • 外傷や眼科手術に関連する変化

などを挙げています。

原発性か続発性かによって、治療方針や反対側の目への考え方も変わります。

診断では眼圧を測る

緑内障の診断で重要なのが、眼圧測定です。

眼圧は、トノメーターという機器を使って測ります。

Cornellは、左右の眼圧を比較することや、正しい方法で測定することの重要性を説明しています。

眼圧だけでなく、

  • 眼の見た目
  • 瞳孔反応
  • 眼の内部
  • 網膜や視神経
  • 房水の出口の構造

なども必要に応じて確認します。

一般の動物病院から獣医眼科医へ紹介されることもあります。

治療の目的は「眼圧を下げる」だけではない

緑内障治療では、眼圧を下げることが大きな目標になります。

しかし、治療の目的はそれだけではありません。

  • 視力をできるだけ守る
  • 痛みを減らす
  • 原因となる病気へ対応する
  • 反対側の目を守る
  • 長期的に快適な状態を保つ

といったことも重要です。

治療には、点眼薬や内服薬などの内科的治療、レーザーやシャントなどの外科的治療が使われることがあります。

どの治療が適しているかは、緑内障の種類、視力が残っているか、眼圧、痛み、犬の全身状態などによって変わります。

失明した眼でも、痛みの管理が必要なことがある

緑内障で視力を失ったあとも、眼圧が高く痛みが続く場合があります。

そのため、「もう見えないから治療しなくてよい」とは限りません。

視力を回復できない場合でも、痛みのない快適な状態を作ることが治療の目的になります。

状態によっては、

  • 薬で眼圧や痛みを管理する
  • 眼内の房水産生を減らす処置
  • 眼球摘出
  • 義眼に近い外観を残す手術

などが検討されることがあります。

具体的な選択肢は、獣医師・獣医眼科医と相談して決めます。

緑内障は長期管理が必要になることが多い

ACVOは、緑内障では長期的な治療とモニタリングが必要になることを説明しています。

眼圧が一度下がっても、その後ずっと安定するとは限りません。

そのため、

  • 定期的な眼圧測定
  • 点眼や薬の継続
  • 視力や痛みの確認
  • 反対側の目のチェック

が必要になることがあります。

薬の回数や種類を自己判断で変えず、主治医の指示に従います。

リキは原発性緑内障で両目を失明しました

うちの柴犬リキは、最初に左目の原発性緑内障を発症しました。

その後、左目は失明し、さらに右目にも緑内障が起こり、現在は全盲です。

発症当日の朝は、目を閉じたまま伏せていて、あまり動きませんでした。

その日のうちに動物病院を受診しましたが、最初は緑内障と確定せず、その後に眼科専門医で診断されました。

これはリキの一例であり、同じ症状なら緑内障という意味ではありません。

実際の経過はこちらにまとめています。

犬の緑内障、発症当日に見られた様子|柴犬リキの実体験 →

発症から両目の手術、全盲になるまでの経過はこちらです。

うちの柴犬リキが全盲になった話 →

緑内障で大切なのは「早く気づくこと」と「痛みを残さないこと」

犬の緑内障は、視力だけの問題ではありません。

急性に眼圧が上がれば強い痛みを伴うことがあり、視力が戻らない場合でも痛みの管理が必要です。

飼い主ができることは、

  • 目の赤みや濁りを見逃さない
  • 目を細める、こするなどの行動を見る
  • 急な視力低下では早めに受診する
  • 診断後は点眼や通院を続ける
  • 失明後も痛みがないか確認する

ことです。

「見えるかどうか」だけではなく、その眼が痛くないか、その犬が快適に暮らせているかまで含めて考える病気です。

失明後の痛み・手術・全盲後の暮らしについては、こちらで整理しています。

犬の緑内障で失明したあと|痛み・手術・全盲後の暮らし →

参考・出典

  1. Glaucoma — American College of Veterinary Ophthalmologists(確認日: 2026/10/5)
  2. Glaucoma — Cornell University College of Veterinary Medicine(確認日: 2026/10/5)
  3. Acute Glaucoma in Small Animals — Merck Veterinary Manual(確認日: 2026/10/5)